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第33話  

「そんなふざけたドラマばかり見ているんじゃない」

 松山昌平は冷たく言った。「俺は向かう側に四年間住んでいたんだ。ストーキングしていたのは俺じゃなくて、むしろ君が俺をストーキングしていたってことになるんじゃないか?」

 そう言い終えると、彼は長い脚を大股に開いて、篠田初の家に踏み込んだ。

 「なんだって?あなた......向かうに住んでたの?」

 篠田初は、ようやく気がついた。向かう側のドアが確かに少し開いていた。

 彼女は耳を触りながら、恥ずかしさでその場から消えてしまいたくなった。

 結局、彼はストーキングしていたわけじゃなくて、もともとここに住んでいたってこと?

 さっき自分が彼に向かって罵ったことを思い出すと、彼女は自惚れ屋の中の自惚れ屋で、恥ずかしくてたまらなくなった。

 松山昌平の鋭い目が、家の中の隅々を漫然と見渡した。

 最後に、彼の視線は女性の寝室に止まった。

 「君の寝室のレイアウトは、俺の部屋とはだいぶ違うな」

 松山昌平は女性の寝室に向かって歩き、様子を見ようとした。

 篠田初は、ベッドの上に育児書が何冊か置いてあるのを思い出し、これを見られたら自分が妊娠していることがばれてしまうと焦った。

 「ダメ!」

 彼女は急いで寝室の入り口に立ちはだかった。

 「却下!」

 松山昌平は強引な性格で、彼がやりたいことを阻止できる者などいなかった。

 「本当にダメ!」

 篠田初は両腕を広げ、松山昌平を入れないように必死になった。彼に対して怒りがこみ上げてきた。「あなたとはそんなに親しい仲じゃないでしょう?私の寝室に、何の権利があって自由に入ってくるのよ?」

 「俺が、君の夫だからだ」

 松山昌平は自分よりはるかに小柄な彼女を見下ろし、その冷たい目には一層の冷徹さが増していた。「それとも、部屋の中に男でも隠れているのか?」

 「松山昌平!」

 篠田初は拳を握りしめた。

 心の中で、優しい言葉では伝わらないなら、力づくしかないと思った。

 どうせ彼女の腕前なら、たった三割の力で松山昌平を自己懐疑の渦に巻き込むことができるからだった。

 「動くな、また見えてるぞ」

 松山昌平は悠然と、もう一度親切に注意を促した。

 「この!下品な!」

 篠田初は無意識に腕を下ろし、胸をしっかりと守った。

 松山昌平はその
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